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トップページ>>パオまるの小説>>魔剣伝承>>第十三羽 強襲

第十三羽 強襲


 月光の刺す電灯の灯らない室内。
 地上の明かりを照り返し、わずかな明るさで地上を照らすその雲は、繁華街上空にのみたむろする存在だ。
 その雲を、忍者装束に身を包んだ数騎は窓際に寄りかかりながら見上げていた。
 窓は開けていない、風が入ってクリスが寒くならないようにだ。
 時計を見上げる。
 時刻は午後十二時。
 つまり今日が明日に変わった時間。
 数騎は腰をあげ、窓際から立ち去る。
 途中、クリスの眠る布団の側に立ち寄った。
 腰を降ろし、顔に張り付いて邪魔そうな髪を顔からとりのぞき、手じかにあったタオルでにじみ出た汗を拭く。
 クリスはつらそうに呼吸を繰り返している。
 胸が締め付けられるような気持ちになった。
 数騎は以前、これに似た光景を見ている。
 助けられなかった玉西。
 自分に救いを求め、見殺しにされた女性。
 彼女が浮かべた笑顔が、ふと頭に思い描かれた。
 クリスの顔を見る。
 クリスの笑顔、それは昨日まで見る事ができたもの。
 だが、今は見る事はできない。
 呪牙塵の呪いに苦しむクリスに、笑顔を浮かべる余裕などはないのだ。
「必ず助けるから」
 自分にしか聞こえない声で呟く。
 もしかしたらクリスと話すのはこれで最後かも知れないな。
 そんなことを考えながら、数騎は立ち上がり、玄関に向かう。
 と、忍者装束の裾が引っ張られた。
 振り返ると、苦しそうな表情を浮かべたクリスが、数騎の服、その右裾を引っ張っていた。
「どうした、クリス?」
「行っちゃうの?」
 苦しげに尋ねるクリスに、数騎はこれから戦場に向かうものとは思えないほど穏やかな顔で答える。
「あぁ、少しお出かけだ。今日は遅くなるかも知れない。オレがいないと寝れなくてつらいだろうが、しばらく勘弁な」
「帰ってくる?」
「ん?」
 突然のクリスの言葉に、数騎はちゃんとした返答を返せない。
 数騎が何かを言うより先に、クリスが再び口にした。
「数騎は、ここに帰ってくる?」
 言葉の意味をようやく理解し、数騎は少し考えた後、
「大丈夫、帰ってくるさ。オレの居場所はここしかないんだ」
 しゃがみこみ、クリスの頭をなでてあげながら続ける。
「ここがオレの最後の居場所だ。これより後はないし、先には何も見えない。大丈夫、オレは帰ってくるよ。少なくとも、お前を一人では逝かせない」
 意を決し、数騎は再び立ち上がると、今度はクリスの顔を見つめながら玄関に向かう。
「オレは帰ってくる、ここがオレの帰る場所だ。だから、クリスはどこにも行かないでオレを待っててくれ。帰る場所に誰もいないんじゃオレは……」
 そこから先は口にしなかった。
 数騎は玄関を開けると振り返ることなく扉を閉め、未練を断ち切るべく扉に鍵をかけた。
 この錠を再び回転させる事はあるのだろうか。
 自分は再びこの部屋に戻ってこれるのだろうか。
 扉を前にした数騎に恐怖が襲い掛かる。
 それは自身の死に対する恐怖などではなく、ただただクリスを救えないかもしれないということを恐れるゆえの恐怖であった。
 意を決し、数騎は扉から離れた。
 夜の世界は別世界。
 血の誘いの待つ戦場に、数騎は向かう決意を決めた。
「じゃあ、行きましょうか」
 気配は感じないがいるのはわかっていた。
 後ろから聞こえてきた声の主は確かめるまでもない、カラスアゲハだ。
「覚悟はできた? 怖いなら今日はやめておいてもいいわよ」
 そんな事を口にするカラスアゲハに、数騎は振り返って答える。
「ふざけろよ、オレがここで退くようにでも見えるってのか?」
「まぁ、そんな子だったらとっくの昔に殺してるわね。惜しくないもの」
「なるほど、いい性格ってわけか。おかげで命拾いできた」
 歪んだ笑みを浮かべそう答えると、数騎はアパートの階段を降り始める。
 その後に続くカラスアゲハは、全く足音を出さずに階段を降りていた。
「坊や、最初に確認しておくわよ。私はあなたに戦闘を実行する以外の点ではあらゆる便宜を図ってあげることになっているわ。索敵もメイザースがやってくれる。あとは坊やが亡霊どもを成仏させてあげるだけよ」
「わかってるさ」
 助力を仰ごうとはもう考えていなかった。
 はじめから一人でやる気だった、正直援軍など期待していなかった。
 敵の居場所を察知してもらい、それを逐一教えてもらえるだけでも十分すぎる。
 それが数騎の正直な心境だった。
「あら、ちょっと意外ね」
 カラスアゲハが目を瞬かせ続ける。
「てっきり、こっそり私に手伝ってくれってお願いしてくるのかと思った」
「しないさ、しても意味ないだろう」
「なんでよ? もしかしたら手伝ってあげるかもしれないでしょ」
「いや、手伝わないね。情が移ったならとにかく、オレとあんたはそこまで深い仲じゃない」
「何度も愛し合ってるのに?」
 艶っぽい声で尋ねるカラスアゲハ。
 そんなカラスアゲハに、数騎はため息混じりに答えた。
「愛し合う? あれは貪り合うだろう? お互いに相手が欲しかっただけだ。愛なんてない。まぁ、少しくらいは気に入ってもらえてるのか?」
「そうじゃなかったら服のお古なんてあげないわよ」
 と、言われて数騎は自分の着ている服に注目する。
 それはホテルに入りヴラドたちとあう直前にカラスアゲハからもらった忍者装束だ。
 普段着で行くより、それっぽい服に替えた方がハクがつくという理由らしい。
 ちなみにドラコという男の後ろに回りこんでヴラドの意表をつくという演出を考えたのもカラスアゲハの考えたものだ。
 おかげで交渉はいい感じにできた、普通に会って普通に話したらもっと舐められていただろう。
 そこまで思い出し、数騎は考えを改めた。
「いや、情はあったな。感謝するよ。お前のおかげであんたらの上司の助力が得られた」
「どういたしまして」
 その言葉を聞き、ようやくカラスアゲハの立ち位置が理解できた。
 つまりそう、カラスアゲハは須藤数騎に対して情を持っている。
 ただし、絆の強さが弱いだけだ。
 大抵の人間は、仲のいい知り合い程度のために命はかけない。
 つまりそれはカラスアゲハと須藤数騎の関係だ。
「なるほど、かんたんな話だ」
 少しだけ嬉しくなった。
 少なくとも、都合が悪くならない限り、カラスアゲハは須藤数騎の味方だろう。
 それだけ理解して納得すると、数騎はカラスアゲハと共に、鏡内界に入れそうな鏡を探し始めたのであった。






「今日は来るだろうか?」
 月下にたたずみ、柴崎はそう口に出していた。
 この町に存在するビルの中でも二番目の高さを持つビルの屋上。
 そこに用意してある、そのビルに通う社員達が休み時間に腰をかけるであろうベンチに柴崎は腰を降ろしていた。
 見渡すとコンクリートの地面。
 白線が規則正しく引かれており、球技をするにはもってこいの広さもある。
「今日もあらわれると思いますか、柴崎さん?」
 声は後ろから聞こえてきた。
 振り返るとそこには里村がいた。
 ベンチには座らず、柴崎の背後に立ち周囲に視線を配っている。
 人目を気にしないため、あいかわらず防御力の高い戦闘服に身を包んでいる。
 屋上に吹く風に髪の毛を流される里村に、柴崎は少しだけ振り返りながら答えた。
「来るだろうな、状況は不利だがだからこそヤツらは強襲にでるだろう」
「なぜです?」
「私のコート、何か感じないか?」
 言われて里村は目を見張る。
 言われてはじめて気付いた。
 よくよく注意してみると、柴崎のコートからかすかな輝光の波動が生じている。
「それは、何ですか?」
「発信機、とでも言った類のものだな。ただし目に見える類ではない、術式だな」
 一呼吸置き、柴崎は続けた。
「昨日戦ったトカゲの獣人にやられたようだ。戦いの最中に私の衣服に術式を施したのだ。
恐らくヤツらの捜索呪文に反応し、こちらの居場所をいつでも敵に知らせる類の術だろう。盗聴、妨害をはじめとしたその他の機能はないそうだ」
「そうだ……って、誰に聞いたのですか?」
「桂原だ、あいつが教えてくれた。私は自分に施された術に気付きもしなかったよ。さすがはヴラド一派、そして桂原といったところか」
 柴崎は頭上を見上げる。
 欠けた月。
 あと幾日したら新月となるのだろう。
 そんな事を考えながら、柴崎はしばらくぼーっとしていようとしたが、里村がそれを許さなかった。
「なぜ今まで教えてくれなかったのですか?」
「直前まで教えないことに意味があったからだ。こちらは向こうの術に気付いていないと相手に思わせる事が今回の作戦だ」
「思わせる……こと?」
「おい、柴崎。どういうことだ、それは!」
 小さな声で反芻する里村の後に続いたのは戟耶の声だった。
 あいかわらずの革ジャン姿に竹刀袋を携帯している。
「桂原がオレに教えなかった作戦のキモってのはその事か、納得のいく説明をもらおうか」
 詰め寄ってくる戟耶。
 さっきから機嫌が悪かったが、今はさらにひどくなっている。
「わかりました、お話しますよ。里村もよく聞いていて欲しい」
 頷く里村。
 話を聞こうと戟耶も怒りを抑えて声を出さないでいる。
「今回の作戦は私の失策からはじまりました。戟耶さんが二人の獣人を撃破した際、私がトカゲの獣人と交戦していたのは覚えていますか?」
「あぁ、無様にも取り逃がしたな。最もオレにも同じ事が言えるが」
 皮肉をいいながらも自分のミスもしっかりと口にする。
 性格は悪いが、戟耶は公平な男だった。
 戟耶の言葉が終わると、柴崎が言葉を続けた。
「それで、その逃がしたトカゲの獣人がなかなかのやり手だったのです。気付かない内に私に術式を施していました。恐らく高位魔術師であるヴラドに何かしらの助力を仰いだのでしょう。私をはじめとして、桂原以外は誰一人私に探索の術式が施されているのに気がつきませんでした」
 探索の術式。
 それは、対象者にかけることで、その対象者がどこにいるか手を取るように存在を感知できる術式だ。
 これは解呪されるまで永続するが、大抵はこの術を施された場合、対象者はこの術式の存在に気付きあっさりとこの術を解呪する。
 探索の術式自体は大した術でなく、隠蔽する力もそれほどのものではない。
 が、ヴラドはこの術に改良を加えてきた。
 隠匿性を極限まで高め、なおかつ術者ではなく、術者の所有物に術を施した。
 直接術者にかけるより、それ以外のものにかけた方が術の隠蔽は容易。
 高位魔術師らしい、実に理知的な術式だった。
 が、柴崎ほどの凄腕の術士を欺いた術式も、有能な術士である桂原にはあっさりと見破られた。
 ヴラドも、桂原並の術士が柴崎たちの側にいるとは考えていないはずだ。
 だからこそこれが好機なのだ。
 ヴラドの仕掛けた罠を逆にこちらが利用する。
 こちらの居場所がわかる以上、敵は好きなタイミングでこちらを奇襲できる。
 だとするならば。
「敵は私達を奇襲するためにこの術式を施したと考えられます。それならこちらはそれを逆手に取り、逆にこちらの用意した地点でもって敵の奇襲を誘い、撃破します」
「なるほど、だから桂原はオレ達に真相を話さなかったわけだな。敵を欺くにはまず味方からか……」
「そうです、そして今このタイミングまで伏せろと命じられていました」
「なるほど、一の亡霊の命令なら仕方ねぇ」
 戟耶は驚くほどあっさりと納得する。
 里村も納得した顔だったが、突然思い出したような顔で柴崎を見た。
「あの、じゃあ……もしかしてもう一組、桂原さんのチームは……」
「予想通りだろう、私達が奇襲されたタイミングで、もっとも効率よく奇襲者に奇襲をかけられる地点で待機している」
 里村は思わずつばを飲み込んだ。
 正直、桂原という人間を見誤っていた。
 ついこの間までは下の数字であった人間が突如、精鋭部隊のトップに躍り出た。
 それは力だけで躍り出たのではないということは里村にはわかっていた。
 単純な戦闘能力で考えるなら、ランページ・ファントムにおける最強の魔剣士は間違いなく戟耶だ。
 戟耶の最大放出はすさまじく、対抗するには魔皇剣並の力を求められる。
 それなしに、桂原という男が桂原以上の場所に立っている理由。
 それは、桂原の持つ力以外に敵の策を手玉にとるほどの知謀こそが原因なのではないか。
 里村は思わずそう感じていた。
 風が吹いた。
 里村の髪が再び風に流される。
 その風に逆らうようにして、里村は周囲を見回した。
 はたして、どこに桂原たちが潜んでいるのだろう。
 里村はそんなことを考えながら、月の下、柴崎の後ろで佇み続けていた。






「どうやらこのビルの上のようね」
 漆黒の闇。
 月の光をさえぎる小さなビルの影。
 その影の中で、気配を殺す二人の人間がいた。
 ペアルックのごとき忍者装束。
 一人は数騎、もう一人はカラスアゲハであった。
「私が手伝ってあげられるのはこれくらいかな、あとは一人で頑張ってね」
 ひらひらと手を振ってみせるカラスアゲハ。
 そんなカラスアゲハを尻目に、数騎は無言で頭上のビルを見上げ続ける。
「カラス、聞いていいか?」
「どうぞ」
「このビルの屋上に仮面使いがいるのか?」
「ええ、いるわよ。ウチのドラコが頑張ってマーキングしてくれたからね。無駄になりそうだったけどあなたが再利用してくれるからよかったって、メイザースは素直に喜んでるわ。弱い術式だから一週間で効果が切れちゃうのよ」
「なるほどな」
 と、数騎は思わず身を伏せた。
 それにあわせるようにカラスアゲハも存在を隠蔽するために陰影の能力を行使する。
 呼応するかのように姿を現したのは光り輝く妖精だった。
 十秒ほど周囲を見て回ると、妖精は羽を羽ばたかせてどこかへ消えていってしまった。
「行動してたのが私と坊やでよかったわ。ドラコやブラバッキーあたりがいたら見つかってたかも」
 いなくなった妖精に対するカラスアゲハの感想がそれだった。
 体を起こした数騎に、カラスアゲハはさらに続けて言った。
「たぶん、あの妖精は生命体の持つ輝光を探知して行動してるんじゃないからしら。妖精光輝って魔剣の能力も大体そんな感じだし」
「仮面使いたちはオレ達の存在に気付いてないってことか?」
「まぁ、妖精飛ばしてるってことはそういうことなんじゃないの? 奇襲にはもってこいだと思うけど」
 そう言うカラスアゲハに対し、数騎はしばらく考えた後に口を開いた。
「何で仮面使いたちはあそこから動かないんだ?」
「何でって?」
「言葉通りだ。仮面使いはなぜ動かない。戦闘において、敵がどの方向からくるかわからない場合は襲撃されるほうが不利のはずだ。迎撃よりは動いたほうが有利なんじゃないのか?」
「誘ってるんじゃないの? ついでに索敵。妖精飛ばして索敵とかする場合は拠点を決めて移動しないほうが魔剣士にも負担がかからないし、効率もいいわ。それに索敵に全力を注いだ時の術士は無防備よ。なら移動しながらどこから敵が襲ってくるかわからない状況よりは、敵の襲撃地点を予測できるほうがいいと思うし」
「襲撃地点が予測できる……か」
 口元に手をあて、数騎はカラスアゲハに視線を向ける。
「カラス、あんたがもし仮面使いたちに奇襲をかけるとしたらどうする?」
「どうする? って、今この状況で奇襲をするならってこと?」
 カラスアゲハの問いかけに、数騎は頷いて答える。
 カラスアゲハは少し考えた後、
「そうね、三つの襲撃方法があるわ。一つはビルをのぼって屋上に行く方法。これは敵がもっとも予測する方法、もっとも予想されやすい襲撃方法ね。だからこそ愚作だわ。次に飛行能力をもっての襲撃、これならどの方向からでも奇襲できるからいい感じね。でも、私達に飛行能力を持つものはドラコだけ。でもあいつ一人じゃ勝てないのは明白。なら、最後の方法は」
 そこまで言って、カラスアゲハは仮面使いがいるであろうビルの隣にそびえる、この町で一番の高さを持つビル。
 それを見つめながら、カラスアゲハは言った。
「あそこね、あのビルを足がかりに襲撃する。戦闘において相手よりも高所を得ることは勝利に繋がるわ。少しでも戦術に学のある人間ならあそこから襲撃する。といっても、無能力者の坊やは最初の手段しか許されていないでしょうけどね」
「なるほど」
 カラスアゲハの意見を聞き終えると、数騎は息をついて見せた。
「罠だな、これは」
「罠?」
 聞き返すカラスアゲハ。
 そんなカラスアゲハに、数騎は冷静に続ける。
「おそらく仮面使いたちはこっちを探す気はないと思う。妖精を飛ばしているのは陽動だよ。こっちを探せれば良し、探せなくてもよし。狙いは迎撃じゃないかな?」
「何でそう思うの?」
「簡単な話だ、仮面使いはなぜこの町で二番目に高いビルに陣取ったと思う?」
「低いビルだと上から襲撃を受けやすい、でもビルが高すぎると妖精を操る場合に距離が離れすぎる。さらに使い魔を飛ばしての探索は天井のない屋上が適しているからできるかぎり高いビルの上に陣取りたい。だから高さに妥協して二番目に高いビルで我慢した。そう考えるべきじゃないの? こんなの常識よ」
「さぁ? 裏世界の人間にとってはそれが常識なんだろうけどね」
 一呼吸置き、数騎は続けた。
「もしオレが仮面使いなら相手がそう考えると予想すると思う。襲撃は上から、なら敵の奇襲地点は間違いなく一番高いビルからだ。もしそこまで予測したならカラスならどうする?」
「そうね、その方角に強力な砲台になりそうな火力重視の魔剣士か魔術師を配置するかしらね」
「戦力に余裕のある場合は?」
「ビルに人間を置くわ。奇襲をかけようとする敵を逆に奇襲する。奇襲をする方はまさか自分が奇襲されるとは思わないでしょうからね」
「なら道は決まったな」
 数騎は仮面使いのいない方、もっとも高いビルに視線を移す。
「奇襲部隊を奇襲する部隊に、さらに奇襲をかける。不意打ちのレベルとしては最高潮ってもんだろうからな」
「なるほどね、裏の裏のそのまた裏」
「それに実利的な問題もある。オレの知る限り仮面使いは呪牙塵の所有者じゃない。なら仮面使いとの戦闘は徒労だ。それよりも違う人間に襲撃をかけた方が呪牙塵の回収率は高まる」
 そう言い終えた数騎に、カラスアゲハは感嘆の息を漏らした。
「すごいわね、坊や。地位が地位ならいい指揮官になれたかもしれないわね」
「お褒めにあずかり光栄ってところかな。じゃあ、あとはオレに任せて、カラスはもう帰りな」
 ただ一つ残る左目で、数騎は町一番の高さを持つビルを睨みつける。
「ここからは、オレ一人の時間だ」
「わかったわ、今日はもう帰る。でも、もし生きて帰ってこれたらこれだけは約束してあげるわ」
 自分の唇に人差し指をあて、カラスアゲハは続ける。
「今みたいに敵だらけな状況でなく、こちらの安全が確保できてあなたが助力の欲しい時、名前を呼びなさい。一度だけ援護してあげるわ」
「ありがとう、ぜひとも次回は助力願える状況であることを祈っているよ」
「私もよ、じゃあね坊や。またあなたとできることを楽しみにしているわ」
 それだけ言って残すと、カラスアゲハはまるで影に溶けるように消え去ってしまった。
「さて、役者はそろい、舞台係は舞台を去る。すばらしい演劇のはじまりってところかな」
 呟く声が風に流れる。
 そうして数騎は仮面使いの待つビルではなく、その対面に存在するビルへと侵入を試みるのであった。






「なぁ、本当に来ると思うか?」
 ビルの中から外を見下ろす男が、仲間にそう尋ねかけた。
 そこは工事中のビル。
 開発途中であるため、壁にはむき出しのコンクリートが見られ、風雨を防ぐ外壁はなく、ただ白いビニールが外と中とをさえぎっている。
 工事用の照明器具に明かりはなく、外から入ってくる月光も微弱。
 そんな居心地の悪い部屋の一室に、二人の男が腰を降ろしていた。
「来ると思うかって? 来るんじゃねぇの?」
 尋ねられた一人がそう答えた。
「あの柴崎と桂原が太鼓判押したんだ。間違いないって」
「そうかなぁ」
 訝しげな表情を浮かべながら、男は風に揺らめく白いビニールを見つめる。
「確かにさ、普通に上っていくのは罠だって相手も思うと思うぜ。でもさ、だからってこのビルに来るとは限らないわけだろ?」
「でも、有利になるのは違いない。桂原の言うとおりこっちに来たなら問題なくこっちは奇襲できる。桂原は魔術師だから一流の暗殺者とまではいかないまでも陰影の使い手だし、オレらは魔剣士。武器を持たない魔剣士は陰影状態の暗殺者並みの気配遮断が出来るんだ。もし相手が忍び込んできたらすぐわかるって」
「まぁ、そうだろうけどさ。敵は屋上の仲間を奇襲するために能力を解放する。そこを奇襲すれば確かに勝率はいいぜ」
「だろ?」
「そうだけどさ」
 しぶしぶと答える男。
 そう、能力者は無能力者に比べれば隠密能力は劣るが、決して太刀打ちできないほどではない。
 陰影の能力者や魔剣を起動していない魔剣士の隠密能力は非常に高く、数メートル近くまで接近し、索敵でもされない限りは敵に発見されずらい。
 それに比べて近づいてくる敵はそうも言っていられない。
 このビルと柴崎たちのいるビルまでは三十メートルほどの距離、高低差を考えるならまだあるだろう。
 その距離に対して攻撃しようとすれば、嫌が応にも魔剣を起動せざるを得ない。
 起動後、突撃するか射撃するかわからないが、どちらにしろこちらに後ろを向けて隙をさらけ出すはず。
 そして、それで勝負は決まる。
 完璧な作戦だ。
 もし、敵が何かしらの間違いで柴崎たちのビルに堂々と押しかけた場合でも、このビルから遠距離攻撃をもって柴崎たちに有利な援護をする事も可能。
 つまり、敵にとってこの二つのビルという空間は死地なのだ。
 問題があるとすれば敵が来るかどうかだけ。
 だけなのだが、男はどうも不安が拭えなかった。
「なぁ、この作戦もしかして穴があるんじゃないのか?」
「穴?」
 聞き返す。
 怪訝な顔をする相棒に、男はさらに告げた。
「もしもさ、敵が桂原たちの予想通りこっちに侵入してきたとするぜ。でもよ、もしそいつらをオレたちが索敵で見つけ出せないとしたらどうよ?」
「見つけ出せない?」
「そう、相手がもしもこっちの予想を上回る陰影の使い手だったらどうするよ?」
「そういうのに遅れをとらないために桂原が外で索敵してんだろうがよ」
「まぁ、そうだけどよ」
 そう、桂原はこの二人と同じチームとして動いていたが、今この場にはいない。
 屋上に出て、敵の索敵をしているのだ。
「でもよ、桂原だって敵にばれないように行動してるんだろ? なら索敵にだって限界はでてくるんじゃないのか?」
「だからオレたちがこうやって索敵して桂原に協力してんじゃねぇか」
 そういうと、男の相棒はコンクリートの床から立ち上がった。
「ちょいと用を足してくる。何かあったら呼べよ」
 そう言うと、男は向こう側の部屋へと行ってしまった。
 そこには工事現場従業員用の簡易トイレがあったからだった。
 その後ろ姿を見送り、男はぼうっとしていた。
 果たして敵は本当にこのビルに来るだろうか。
 それを打ち倒すことが出来るだろうか。
 そして、自分と相棒は、これから先も敵を打ち倒し、精鋭部隊の上位に食い込むことができるか。
 そう、十二や十三などという下位の数字ではなく、誰もが憧れる、五以上の数字に。
 武功をあげ続ければ、昇進も不可能ではない。
 そうすれば給料もあがり、いつかは豪勢な暮らしが出来るというもの。
 それが、男がこの世で行った最後の思考だった。
 感じたのは痛覚、気がついたのは触覚だ。
 首元に味わうとは予想もしていなかった痛みが走り、首から熱いものが迸った。
 そう、予感が的中した。
 敵はこちらが察知できないほどの陰影の使い手だった。
 もうだめだ、自分は殺される。
 いや、殺された。
 痛みに苦しみながら後ろを振り返る。
 そこには、こちらの体を拘束しようともせず首を掻っ切り、そしてトドメを刺すために逆手で握った短刀を振り下ろそうとする漆黒の影。
 もはや魔剣起動は間に合わない。
 助からないという事実から混乱し、ろくな反撃も思い浮かばない。
 だが、やらなければいけないことはわかっていた。
 それは相棒という存在。
 自分が何の役にも立たずに殺されれば、この恐ろしい暗殺者に相棒が殺されてしまう。
 だから口を開く。
 裂かれた喉の痛みも堪え、機能の低下した喉を震わせて男が叫んだ。
 叫びがビルに響き渡る。
 それは、十三の名を持つ亡霊の断末魔でもあり、暗殺者にとって絶対有利な時間の終わりを告げる警笛でもあった。






「ちぃ、しくじった!」
 思わずそう漏らしてしまうのにも無理はない。
 初撃は完璧な成功だと思った。
 さすがに二対一でやりあうのは難しい。
 そう考え、二人が一人になったところを狙ったのだが、大きな失敗を犯してしまった。
 良く映画とかで後ろからナイフを持って忍び寄る暗殺者は相手の口をふさいで喉を裂く。
 が、所詮映画の話と考え、数騎はそうしなかった。
 ナイフで喉を裂く前に触ったら対応されてしまうではないか。
 それに手を噛まれるという事例も聞いたことがある。
 何がベストかわからなかったが、とりあえず喉をつぶせばなんとかなるだろう。
 そう思い、数騎は相手に触れることなく殺害を決行した。
 それがいけなかった。
 数騎に殺された相手は、死の間際で叫びを上げ、もう一人の仲間に数騎の存在を知らしめた。
 焦りが募る。
 数騎はその場から逃げ出し、一端体勢を立て直そうと図った。
 数騎は無能力者だ。
 隠密能力はどんな陰影の能力者よりも優れている。
 代償として戦闘能力は絶望的なまでに低い。
 数騎はその短所をむしろ長所と考え、気配を絶って進入し、幸先よくランページ・ファントムの精鋭の撃破に成功した。
 が、
「おおおおおおおおおおおおっ!」
 絶叫。
 仲間を殺されてたけり狂う魔剣士が、数騎を見つけ出して咆哮をあげる。
 十二の亡霊。
 彼の右手には一振りの戦斧。
「唸れ、ラビリス!」
 魔剣士が、己が魔剣を解き放った。
 殺意と言う名の輝光が迸り、数騎の全身に寒気が走る。
 怨恨渦巻くその魔剣士に背を向けながら、数騎は生きた心地もしていなかった。
 これほどまでに壮絶な殺意を向けられたのは始めての経験だったからだ。
 男が告げた言葉と共に上がったのは悲鳴の如き騒音。
 ぶるぶると大気が震えあがる。
 喉元に、どうしようもないほどの恐怖がこみ上げてきた。
 だが叫ばない。
 数騎は少しでも自分の存在を隠蔽しようと、近くの部屋に飛び込んだ。
 このビルは作りかけと言えど多くの壁がある。
 それを巧みに使い、身を隠す。
 時刻は夜、さらにこのビルに照明はない。
 周囲の暗さを活かし、もう一度身を隠せば奇襲も出来る。
 その考えの甘さに気付くのに、数秒も時間は必要なかった。
 突然、数騎の体にコンクリートの破片が襲い掛かった。
 目の辺り以外を完全に布で覆う忍者装束であるため、痛みが走っただけで体に傷はつかない。
 が、目の前の光景はそれが危険な状況であることを一切否定させなかった。
 正面には片手で持てる小型の戦斧を持つ男。
 その男を数騎との間にあったコンクリートの壁。
 それは、男の振るった魔剣の力により、粉々に粉砕されてしまった。
 物体を高速振動させることによって対象を破壊する、近接戦闘に特化した威力を持つ量産魔剣ラビリス。
 それこそが、十二の数字を持つ魔剣士の得物だった。
「逃がさないぞ、粉々にしてやる。血煙に変えてくれる!」
 血走った目に浮かぶ感情は憎悪。
 友を失った男の激情は、仇を討たぬ限り終わりは訪れない。
 間合いは五メートル。
 数騎にとっては遠い距離でも、精鋭部隊に数えられる人間にとっては一足一刀の間合い。
 正面からぶつかっても勝機はない。
 そう悟った数騎は、すぐさま男に背を向けて逃げを選ぶ。
 が、
「死ねぇ!」
 男の跳躍は、数騎の逃走速度を絶望的なまでに上回っていた。
 迫り来る大気の振動。
 振り上げる戦斧はまさしく死神の鎌に似て。
 背中を向ける数騎に、男は戦斧を振り下ろした。
 そして、
「世界(ワールド)」
 巨大な輝光が部屋に放出された。
 閃光が走り、一瞬視力が奪われる。
 そして、その世界が展開された。
 表面上、周りに全く変化はない。
 ただ、空気だけが異質なものに変化した。
「我は信じる。汝、術失うは絶対の法なり」
 流れるような旋律、それに呼応するかの用に魔剣士の握るラビリスがその機能を停止させ、
「貫け」
 魔剣士の首に突起物が生えた。
 数騎にはその用に見えた。
 横から飛来した氷の弾丸が、魔剣士の首を横から串刺しにしたのだ。
 数騎に踊りかかろうとしていた男が床に倒れ伏した。
 肉体を痙攣させながら、魔剣士は顔を上げ、近づいてくる男に視線を向ける。
「桂……原……」
 喉を貫かれながら、魔剣士は必死で言葉を紡ぐ。
 なぜ味方であるはずの桂原が、それよりも仲間の仇が討てなくなってしまう。
 魔剣士の頭に浮かんだのは、ただ受け入れ難い現実に対する憎悪。
「すまない、山形。坊やを殺させるわけにはいかないのさ」
 突如部屋に現れた桂原は、右手に本を抱えたまま左手の指を鳴らす。
「じゃあな」
 その言葉と同時に、空中に幾本もの氷の槍が出現し、それがいっせいに山形と呼ばれた魔剣士に襲い掛かった。
 幾本もの槍に貫かれ、相棒を失った魔剣士、山形は味方に殺された。






「なんで助けた?」
「坊やを殺させるわけにはいかなかったからだよ」
 氷に串刺しにされて絶命している魔剣士を横目に、数騎がさらに問いかけた。
「なんで仲間を殺したんだ? あいつはあんたら亡霊のお仲間さんだろ?」
「仲間じゃないから殺したって言ったら?」
「仲間じゃない?」
 怪訝な顔を浮かべる数騎。
 そんな数騎に向かって、桂原は微笑みながら本を閉じる。
 桂原の展開していた世界の結界が崩壊し、異質な空気が元に戻る。
「まぁ、あまり深読みはしないほうがいい。知りすぎていい事はあまり多くはないよ、坊や」
 本を懐にしまいこみ、桂原は立ち尽くしている数騎にゆっくり近づきその頬に手を差し伸べた。
 感触を楽しむように、桂原は数騎の頬に手のひらを這わせる。
「ところで坊や、なんでこんな危険な真似をしているんだ? 一歩間違えれば返り討ちだよ」
「わかってるさ、でもやらなきゃいけなかった」
「何でだい?」
「呪牙塵が欲しい、家族が死かけてる」
「家族が……?」
 桂原は数騎の頬から手を離すと、その手を口元に押し当てて考え始めた。
「なるほど、そういうことか。そういうことなら助力は惜しみたくないが、あまりおおっぴらにも動けない」
 桂原はさらに思案にくれると、ようやく口を開いた。
「家族というのは鋼骨の魔剣士か?」
「わかるか?」
「他に思い当たらない。そうだな、協力はしたいができない、今日の事だってあまりやりたくはなかった。呪牙塵が欲しければ実力で奪うといい」
「誰が持ってる?」
「戟耶」
「ゲキヤ?」
「柴崎じゃない方さ、性格の悪そうな顔している日本刀を持った男だ。そいつが呪牙塵の魔剣士だ」
「そいつが持ってるのか?」
「持ってる、だが奪うのは困難だぞ」
「わかっただけでもありがたいさ」
 言ってちらっと後ろを見る数騎。
 帰ってもいいかと態度で示している。
「ん、お帰りかい坊や。帰ってもいいんだぞ」
「最後に一つ聞かせてくれ、なんでオレをどうにかしたりしないんだ?」
「捕らえないかと? 殺さないかと聞いているのか?」
 桂原の言葉に、数騎はしっかりと頷いて見せる。
 そんな数騎に、桂原は面白そうな顔をしてみせた。
「こっちにはこっちの事情があるってことさ。お互いに人間は利用しあおうってことだ。いや、実に愉快なことだね」
「わかった、教えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
 答える桂原に、数騎は背を向けて歩き出す。
 その背中に、桂原は優しく声をかけた。
「この騒ぎだ、向こうのビルのやつらがこのビルに殺到してくるだろう。見つからないように逃げるんだよ」
「わかった」
 影に溶け込む数騎。
 もはや姿も気配もなくなった数騎に、桂原は最後に助言を与えた。
「ライオット・ビル、明日の夜十時に行くといい」
 返事はない、だが桂原は続けた。
「待ち人が来るぞ、一人とは限らないがな。あとは坊やの頑張り次第だ、健闘を祈る」
 影から数騎の腕が見えた。
 手で感謝を示すと、再び闇へと溶けていった。
 数分立つと足音が聞こえてきた。
 目を血走らせた柴崎が、鋭い視線をこちらに向けてくる。
 桂原は、どう言い訳しようかと、わずかに困った顔をして見せたのであった。






「ただいま」
 暗い部屋。
 帰りを待つ人がいるその部屋に、数騎は帰ってきた。
「かず……き……?」
 かすかな声が聞こえてきた。
 安アパートの畳の上。
 布団の中で横になっていたクリスの声だった。
 あまりにも弱々しく、ともすれば聞き逃してしまいそうな声。
 だが、数騎の耳にはしっかりと届いていた。
「そうだよ、オレは帰ってきたぜ」
 優しく頷いてみせ、数騎は足早にクリスの側まで歩いていく。
「怪我……してない……?」
「大丈夫、オレはどこも壊れちゃいないさ」
 そう言いながらクリスの枕元に腰を降ろし、寝る支度をするついでに忍者装束の上半身部分を脱いで見せた。
 痩せこけた体。
 元から脂肪が少なかったというのに、薬物のせいでさらに痩せ細っている。
 確かに健康とは言い難い体ではあったが、怪我と呼べるものが何もなかったのも事実であった。
「見ろよ、どこも怪我してない。大丈夫さ」
「でも、血の臭いがする」
「あぁ、それか。大丈夫、一人殺してきただけだから」
 そこまで言うと、数騎は顔を曇らせる。
「すまない、クリス。呪牙塵は奪えなかったよ。殺したやつがさ、持ってなかったんだ」
「いいよ、数騎が無事に帰ってきてくれたんだもん」
「大丈夫だ、明日は絶対奪い取って来てやるから。どんな手段を使ってでも奪い取ってくる」
「でも、危ないよ……」
「構うもんか、クリスのためならなんてことない」
 そこまで言うと、数騎はその場から立ち上がった。
「風呂入ってくるよ、血の臭いがついたままじゃ臭くて眠れないだろうからな。大丈夫、すぐ戻ってくるから。寝るのはそれまで待っててくれよ」
 そのままクリスに背を向けると、数騎は風呂場に向かって消えていってしまった。
 その後姿が見えなくなると、クリスは体を震わせ始めた。
 全身を犯す呪牙塵の呪いによる体調不良のせいではない。
 数騎が帰ってきたことに喜び、思わず緊張が緩んだだめだ。
「よかった……」
 もう帰ってこないかと思った。
 自分をあそこまで傷つけた人間を相手に、数騎が生きて帰ってなどこれないと考えていた。
 だが帰ってきてくれた。
 私の元に戻ってきてくれた。
 それが嬉しかった。
「う……うう……」
 涙が流れた。
 自分にとって大切な人が生きて帰ってきてくれたことが嬉しくて。
 何が悲しいのかもわからずに、クリスは嬉しくて泣いていた。
 それでよほど安心できたのだろう。
 風呂からあがった数騎と手をつないで眠った時。
 明日死ぬかもしれないというのにクリスは、まったく恐怖を覚えることなく朝まで眠る事ができたのだった。





















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