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プロローグ


 ただじっと蹲っていた。
 寒い。
 もう十一月だからと言って、あまりにも寒すぎる。
 そう考えながら、少女は体を丸めていた。
 ビルとビルの間に存在するわずかな空間。
 路地裏と呼ばれる薄汚い場所で、少女は壁に背をつけながら蹲っていた。
 年齢は十代前半かそこら、外見は小学生と誰もが口にするほどに幼い。
 そんな少女が路地裏で、ホームレスのようにダンボールで身を包みながら蹲っている。
 寒い。
 寒くて泣きそうだ。
 だが、少女にとってはもっと切実な問題があった。
 眠い。
 眠らなくては死んでしまいそうなほど眠い。
 でも眠れない。
 目は血走り、呼吸は荒く、意識は途切れがちになっている。
 しかし、眠ることはおろか、気絶さえも許されてはないのだ。
 これはどうにも仕方のないこと。
 ふと路地裏の外に顔を向けた。
 洗髪をすればさぞきれいになるだろうと思われる薄汚れた金髪が、顔の動きにあわせて流れると、緑色の瞳が路地裏の外で煌くネオンの光を映しこんだ。
 大丈夫、誰もいない。
 彼女は小さく一息つくと、ダンボールと、そばに置いておいた新聞紙を布団代わりにし、地面に横たわった。
 寒くたって眠れるよ。
 だって今日はあなたが一緒なんだもん。
 小さく微笑み、少女は男の手を握り締めた。
 全ての呪縛から開放され、少女はやすらかな寝息を立て始める。
 その寝顔は、天使を思わせる穏やかさにあふれていた。











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