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プロローグ


「はぁ、はぁ、はぁ……」
 路地裏を走っていた。
 よくわからなかった。
 何が起こっているかがわからない。
 何よりも、なぜここにいるかもわからなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 夜の街を走っていた。
 頭が混乱していてよくわからない。
 ただ、この先に行かなくてはいけない気がしていた。
 夜闇を走る。
 ただ真っ直ぐに、寒空の中で汗を流しながら走る。
 そこに行かなくてはいけないから。
 そこに自分がいるであろうということを、すでに私は知っているから。
 だから、一心不乱に走り続けている。
 でも、なぜここにいるのか。
 なぜ、生きているのかが一向に理解できない。
 足がほつれた。
 少々頑張って走りすぎたようだ。
 足を止め、呼吸を整えることにした。
 汗が頬を伝う。
 腰まである長い、茶を含んだ髪が顔にへばりつく。
 顔から髪を引き剥がしながら、ふと横を見る。
 そこにはガラス。
 ビルの窓ガラスは透明で、でも部屋に電気がついていないため、こちらの姿をよく映してくれていた。
 見間違いじゃない。
 でも、どうしてその人間が映っているのかがわからない。
 それでも見間違いではないと、ガラスに映るその女性は、自分と同じ困惑した表情をしていた。
 ガラスに映る女性。
 赤い着物を着込み、腰まである長い髪を揺らして真正面から鏡を見つめている女性。
 そこに移っている人間は私が知る限り、桐里神楽という名の女性であることに間違いはなかった。






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